2019.04.27 コラム 先端設備等導入計画による新規設備投資の税制支援措置(償却資産税軽減)
1.「先端設備等導入計画」の概要
(1)制度の概要
「先端設備等導入計画」は、生産性向上特別措置法において措置された、中小企業・小規模事業者等が、設備投資を通じて労働生産性の向上を図るための計画です。この計画は、市区町村が国から「導入促進基本計画」の同意を受けている場合に、認定を受けることができます。認定を受けた場合は税制支援などの支援措置を受けることができます。
【支援措置】
●税制措置・・・生産性を高めるための設備を取得した場合、固定資産税の軽減措置(3年間、ゼロ~1/2の間で市町村の定める割合に軽減)により税制面から支援
●金融支援・・・計画に基づく事業に必要な資金繰りを支援 (信用保証)
●予算支援・・・認定事業者に対する一部補助金における優先採択(審査時の加点)
(2)制度利用のポイント
【ポイント1】 「導入促進基本計画」の同意を受けた市区町村において新たに設備を導入する中小企業者が対象
【ポイント2】 事前確認を受けた計画が対象
認定経営革新等支援機関(商工会議所・商工会・中央会や士業、地域金融機関等)に予め計画の確認(事前確認)を受けて、市町村に申請する必要があります。
【ポイント3】 認定された場合、計画実行のための支援措置(税制措置等)が受けられます
(3)制度活用の流れ
1.制度の利用を検討/事前確認・準備
① 新たに導入する設備が所在する市区町村が「導入促進基本計画」を策定しているか確認。
・導入促進基本計画を策定している市区町村については、中小企業庁HP等で公表されます。
・市区町村によっては、認定の対象となっていない業種や地域等もございますので、詳細については各市区町村にお問い合わせください。
・認定を受けられるのは、新規取得する設備が所在する市区町村になります。
② 認定を受けるためには、該当する新規取得設備の取得日より前に「先端設備等導入計画」の策定・認定が必要なため、活用にあたってはスケジュールを確認。
・既に取得した設備を対象とする計画は認定されませんのでご注意ください。(特例なし)
・認定経営革新等支援機関の事前確認や市区町村における認定事務に一定以上期間を要する場合があります。余裕を持って計画の策定準備をしてください。
●税制措置を受けたい場合
・適用対象者の要件(資本金1億円以下など)や手続き等を確認して下さい。
・税制措置を受けるためには、計画申請時に工業会証明書や認定経営革新等支援機関の確認書等が必要です。
●金融支援を受けたい場合
・適用対象者の要件や手続き等を確認して下さい。
・金融支援を受けるためには、計画申請前に関係機関にご相談頂く必要があります。
・また、認定経営革新等支援機関の確認書等が必要です。
2.「先端設備等導入計画」の作成
① 市区町村が策定した「導入促進基本計画」の内容に沿っているか確認。
②「先端設備等導入計画」の様式・記載例を確認し、認定支援機関に確認を依頼。
③ 税制措置を受けるためには、新規取得設備に係る工業会証明書を依頼。
※ 申請までに工業会証明書が取得できない場合には、市区町村に、後日追加提出する旨をお伝えください。
3.「先端設備等導入計画」の申請・認定
① 市区町村長に計画申請書(必要書類を添付)を提出。
② 認定を受けた場合、市区町村長から認定書が交付されます。(計画申請書の写しが添付されている場合もあります。)
4.「先端設備等導入計画」の開始、取組の実行
税制措置・金融支援を受け、生産性向上のための取組を実行。
※ 税制措置の適用を受けるためには別途要件を満たす必要があります。
(4)中小企業者の範囲
認定を受けられる「中小企業者」の規模については、中小企業等経営強化法第2条第1項に定められています。
(注)市区町村が定める導入促進基本計画によって対象となる業種等が異なる場合があります。 また、税制支援は対象となる規模要件が異なりますのでご注意ください。企業組合、協業組合、事業協同組合等についても先端設備等導入計画の認定を受けることができます。
(5)記載内容
中小企業者が、①一定期間内に、②労働生産性を、③一定程度(直近事業年度末比で年平均3%以上)向上させるため、④先端設備等を導入する計画を策定し、その内容が新たに導入する設備が所在する市区町村の「導入促進基本計画」に合致する場合に認定を受けられます。
2.税制支援
(1)税制の概要 … 地方税法附則第15条第47項(固定資産税等の課税標準の特例)
①中小事業者等が、②適用期間内に、市区町村から認定を受けた「先端設備等導入計画」に基づき、③一定の設備を新規取得した場合、新規取得設備に係る固定資産税の課税標準が3年間にわたってゼロ~1/2の間で市町村が定めた割合に軽減されます。
① 中小事業者等とは?
・資本金もしくは出資金の額が1億円以下の法人
・資本金もしくは出資金を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
・常時使用する従業員数が1,000人以下の個人
ただし、一定の法人は、たとえ資本金が1億円以下でも中小企業者とはなりません。
② 適用期間とは?
「生産性向上特別措置法」の施行日から平成33年3月31日までの期間
③ 一定の設備とは?
<先端設備等の要件> 下の表の対象設備のうち、以下の2つの要件を満たすもの
・要件①:一定期間内に販売されたモデル (最新モデルである必要はありません。中古資産は対象外です。)
・要件②:生産性の向上に資するものの指標(生産効率、エネルギー効率、精度など)が 旧モデルと比較して年平均1%以上向上している設備
※要件①、②について、工業会等から証明書を取得する必要があります。
<対象設備>
設備の種類 用途又は細目 最低価額(1台1基又は一の取得価額) 販売開始時期
機械装置 (全て) 160万円以上 10年以内
工具 (測定工具及び検査工具) 30万円以上 5年以内
器具備品 (全て) 30万円以上 6年以内
建物附属設備(償却資産課税されるもの全て) 60万円以上 14年以内
※ 上記はあくまで対象となり得る対象設備のリストです。市区町村が策定する「導入促進基本計画」によっては、対象が異なる場合がありますのでご注意ください。
(2)適用手続き(フロー)
① 中小事業者等は、当該設備を生産した機器メーカー等(以下「設備メーカー」)に証明書 の発行を依頼してください。(中小企業経営強化税制と同じ証明書(1枚)で適用できます。) ② 依頼を受けた設備メーカー等は、証明書(様式1)及びチェックシート(様式2)に必要事項を記入の上、当該設備を担当する工業会等の確認を受けてください。
(注)設備の種類ごとに担当する工業会等が定められています。詳しくは中小企業庁ホームページをご参照ください。
③ 工業会等は、証明書及びチェックシートの記入内容を確認の上、設備メーカー等に証明書を発行します。
④ 工業会等から証明書の発行を受けた設備メーカー等は、依頼があった設備ユーザーに証明書を転送します。
⑤・⑥ 認定経営革新等支援機関(商工会議所、商工会等)において、「先端設備等導入計画」の内容(直接当該事業の用に供する設備の導入によって労働生産性が年平均3%以上向上するか)を確認し、確認書を発行。
⑦・⑧ 中小事業者等は、計画申請書及びその写しとともに④の工業会証明書の写し、⑥の認定経営革新等支援機関の事前確認書を添付して、市区町村に計画申請します。市区町村は、内容を確認し、適正と認められた場合は認定書等を交付します。
⑨・⑩ 認定を受けた先端設備等導入計画に基づき取得した先端設備等については、税法上の要件を満たす場合には、税務申告において税制上の優遇措置の適用を受けることができます。税務申告に際しては、納税書類に④の工業会証明書の写し、⑦認定を受けた計画の写し、⑧認定書の写しを添付します。
(注)本手続きを行っていただいた場合でも、税務の要件(取得価額や中古資産でない等)を満たさない場合は、税制の適用が受けられないことにご注意ください。
各様式は中小企業庁ホームページからダウンロードできますが、市区町村によっては、自治体用にカスタマイズしている可能性もありますので、新たに導入する設備が所在する市区町村の自治体のHPなどもご確認ください。
(3)設備の取得時期
先端設備等については、「先端設備等導入計画」の認定後に取得することが【必須】です。中小企業等経営強化法における「経営力向上計画」のように、設備取得後に計画申請を認める特例はありませんのでご注意下さい。
【例外】工業会証明書が申請までに間に合わない場合
固定資産税の特例を利用するためには、工業会証明書が必要となります。設備取得前までに「先端設備等導入計画」の認定を取ることが必須となりますが、「先端設備等導入計画」の申請・認定前までに工業会の証明書が取得できなった場合でも、認定後から賦課期日(1月1日)までに、様式第4による誓約書及び工業会証明書を追加提出することで3年間特例を受けることが可能です(計画変更により設備を追加する場合も同様です)。
※税務申告に際しては、納税書類に、工業会証明書の写し、認定を受けた計画の写し、認定書の写しを添付してください。
(中小企業庁HP 先端設備等導入計画策定の手引きより抜粋)