お知らせ

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2019.02.12 コラム 取締役が取締役会決議に加われない場合がある?!

   - 取締役の特別利害関係について -

 

 取締役会設置会社では、業務執行の決定、代表取締役の選定、重要な財産の処分や譲受け等、会社の業務に関する重要なことは、取締役会の決議によって決定します。取締役の過半数が出席し、その過半数で決定しますが、取締役会の決議に取締役が加われない場合があります。どんな場合でしょうか。

 

 取締役は、会社に対し忠実義務を負っていますが、以下のような「特別の利害関係を有する」取締役に該当すると判断される場合は、取締役会の決議に加わることができないばかりか、その決議事項については定足数から除き、議長にもなれません。

 ただし、この特別利害関係の範囲は、会社法では特に定義していませんので、明確ではありません。判例や学説から判断することになります。

 学説では、特別利害関係の範囲は、「会社に対する忠実義務を誠実に履行することが定型的に困難と認められる個人的利害関係ないし会社外の利害関係」としています。

 以下、実務の面で時々発生する取締役と会社の間の取引について、まとめてみました。

 

【取締役会の決議に加わることができない場合】 以下、「法」とあるのは、会社法を示します。

  • ● 譲渡制限株式の譲渡承認(法139)

 譲渡制限株式の譲渡承認を得る場合、取締役が譲受人・譲渡人、どちらの場合も決議に加わることはできません。

  • ● 取締役の競業取引承認(法365①)

 取締役は、会社の事業に関するノウハウを持っていることが多く、会社の機密保持についても重要な役割を果たしています。したがって、取締役が自身及び第三者のために会社と同じ業種の取引をする場合には、会社に大きな損害を与える可能性があるため、事前に取締役会の承認を受ける必要がありますが、決議には加わることはできません。

  • ● 取締役の利益相反取引承認(法365①)

 取締役自身及び第三者のために、会社と取引を行なう場合には、お手盛りで会社にとって不利益な取引を行なう可能性があるため、制限が設けられています。競業取引同様に、事前に取締役会の承認を受ける必要がありますが、決議には加わることはできません。

 

  (承認が必要な場合の例)

     ・取締役と会社間の売買契約

     ・会社から取締役への贈与・貸与

     ・取締役から会社への金銭の利付貸付

     ・会社の取締役への債務保証

     ・取締役と当該取締役が代表となって行う(代表取締役が複数の場合)会社との取引

     ・取締役と当該取締役が100%株式保有している会社との取引

 

 

【競業・利益相反取引をする場合の手順】

1.招集通知発送

取引を行う前に重要な事項(目的、価格など)を開示する。

 当該取締役について、取締役会全体の議決権を有さなくなるものではないため、招集通知等はしなければならないとされている。

2.取締役会開催 

当該取締役は、定足数に含まれず、議決権はなく、議長にもなれない。当該取締役を除いた取締役の過半数で決議をする。

取締役会議事録には、当該取締役が特別利害関係を有する取締役で、審議・採決に参加しなかったことを、議長を交代したときもその旨を記載します。

3.取引後、当該取締役は、その取引の内容を取締役会で報告する。(法365②)

 

 

【取締役会設置会社と取締役会非設置会社・特例有限会社との違い】

 競業・利益相反取引に関する承認決議は、取締役会設置会社では取締役会においてされます(法365①)が、取締役会非設置会社(特例有限会社も)では、株主総会の普通決議でされます(法356①)。その場合、取締役会設置会社と異なり、当該取締役が株主である場合、議決権について制限はなく、そのまま議決権を行使することができます。株主総会の議決権は、株主個人に与えられているものだからです。

 株主総会の議長についても、同じ理由で、特別利害関係を有する取締役が議長となることもできるとされています。

 

 個別のケースで判断が異なることもあるようです。判断に迷う場合は、取締役会等で承認を得ておいたほうが安全と言えるでしょう。