2023.04.28 コラム 家族信託について
お客様のご親族の方から、本人が認知症と診断されてしまい、事業の継続に困っているとのご相談をいただくことがあります。
認知症になられた場合、成年後見制度を活用いただくことができますが、手続きが煩雑であり、相続税対策や投資運用など、被後見人の財産を積極的に動かすことはできません。
この後見人制度に代わり、認知症対策として、家族信託がとても注目されています。資産家の方、障害のある子に財産を相続させたい方、事業承継をしたい方などは、認知症になる前に家族信託を検討されることをおすすめします。
家族信託は、自分の老後や介護時に備え、保有する不動産や預貯金などを信頼できる家族に託し、管理・処分を任せる財産管理の方法のことです。家族信託は、委託者・受託者・受益者の3者の間でおこなわれます。委託者は自身が保有する財産の管理を受託者に任せます。受託者は財産の管理をおこないます。そして、財産の管理で利益があった場合は、受益者がその利益を得ます。
家族信託のメリット
事業を承継させたい方
中小企業の場合には、オーナー社長が自社株式の大部分を所有していることが多いですが、後継者に一気に贈与してしまうと、贈与税が発生し、経営権を渡してしまうことになる、という問題点があります。家族信託を活用すると、経営権を社長が維持し、様子を見ながら後継者に経営権を譲ることができます。
さらに家族信託では先々の受益者を指定することができますので、後継者以外の相続人が自社株式を相続し、株式が分散してしまうのを防ぐことができます。
不動産賃貸業の方
認知症になってしまった後でも、賃貸住宅の管理や不動産の処分などを行うことができます。また、認知症が発症した後でも、相続税対策が可能です。
障害のある子に財産を相続させたい方
障害のある子の場合、財産を得たとしても活用することができません。 この場合には、まず、親を委託者かつ受益者、親族などの第三者を受託者にし、親の死後は、子を第2受益者、とする家族信託を行うことで、子は財産から得られる利益を手に入れることができます。
認知症対策は早めに検討することが必要で、原則として認知症になってからは家族信託はできません。ただし軽度の認知症であれば家族信託契約をできるケースがあるようです。成年後見制度でないとできないこともあるなどデメリットもありますので、詳細は専門家にご相談いただき、早めの認知症対策をお勧めいたします。