お知らせ

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2025.09.25 コラム 特例事業承継税制の期限について

中小企業庁の研究会「中小企業の親族内承継に関する検討会」の第3回が8月13日行われました。この検討会は、中小企業を取り巻く環境の変化を踏まえ、親族内承継の円滑な実現に向けた今後の事業承継税制のあり方と後継者育成の方向性について議論することを目的としています。

「親族内承継に係る施策の効果検証と今後の検討の方向性について」というテーマの検討会資料が8月25日に公表されました。資料の概要は以下の通りです。

1.中小企業経営者の現状と事業承継

  • 廃業の傾向: 休廃業・解散件数は増加傾向にあり、特に2024年は前年比で大幅に増加しました。また、廃業予定企業の約3割が後継者不在を理由に挙げています。
  • 経営者の高齢化: 経営者の年齢分布を見ると、事業承継が必要となる70代以上の経営者が多く、さらに今後本格的に承継が必要となる60代の層も多く存在します。2014年から2024年にかけて、全ての都道府県で70代以上の経営者の割合が増加しており、特に地方圏での増加幅が大きい傾向にあります。
  • 国際比較: 日本の経営者は、米国やドイツ、韓国と比較して、60代以上の割合が高い状況です。
  • 後継者選定: 経営者の就任経緯の推移では、内部昇格やM&Aによる就任が増加傾向にありますが、親族内承継(同族承継)の割合が依然として高い状況です。多くの経営者は後継者選定の優先順位として、まず「親族」を第一に検討する傾向にあります。

2.事業承継税制について

事業承継税制は、非上場株式等にかかる贈与税・相続税の納税を猶予する制度です。

  • 法人版事業承継税制(特例措置): 2018年度から10年間(2027年末まで)の時限措置として導入されました。この制度では、猶予対象株式数に上限がなくなり、贈与税・相続税ともに猶予割合が100%となっています。
  • 個人版事業承継税制: 2028年末までの時限措置として、事業用資産の承継にかかる相続税・贈与税が100%納税猶予される制度です。
  • 活用状況: 特例措置が創設された2018年以降、特例承継計画の申請件数は年平均約3,000件となっています。M&Aが都市部に集中する傾向がある一方、特例承継計画は都市部に偏ることなく提出されており、地方の事業承継問題の解決手段として広く普及していると推察されます。
  • 今後の課題: 特例措置の適用期限(2027年12月末)が迫っていますが、令和7年度与党税制改正大綱では「今後とも延長しない」と明記されています。これを受けて、事業承継による世代交代が停滞しないよう、今後の政策のあり方について検討が必要とされています。

3.法人版事業承継税制(特例措置)の期限が迫っているが…

ご相談いただく立場として最近感じていることがあります。この特例措置を使って従業員承継をしたいという経営者の方が今になって増えてきていることです。

従業員承継にも利用できるとしているのはこの特例措置ぐらいしか見当たらない気もしますし、承継する従業員の金銭的な負担が少ないというメリットはあります。反面、いくつかのデメリットもあります。また長期間にわたっての報告義務等も発生し、顧問会計事務所の支援は欠かせません。

特例措置を受けるには、いわゆる「特例承継計画」を県に提出し、認定を受けなければなりません。その期限は2026年3月末です。年明けには確定申告シーズン等にもなり、現実的には2025年12月末までには申請しておきたいところです。そうなりますと残すところあと2か月。特例措置を活用しようとしている方は、すぐにでも検討を開始しなければ、時間切れとなってしまいます。