2024.08.30 コラム 退職金を支給する法人の損金算入時期と受給する個人の税務処理
退職金と一言で言っても、役員か従業員か、退職一時金か死亡退職金、退職年金かでそれぞれ税務処理が変わってきます。今回は退職金を支給する法人の損金算入時期と受給する個人の所得の扱いについて簡単にまとめてみました。
1.支給する側(法人)
⑴役員へ支給する場合の損金算入時期
①退職一時金・死亡退職金
株主総会等で具体的な金額を決定した、もしくは実際に支給した日の事業年度と定められています。
ここで言う「株主総会等で具体的な金額を決定した」とは、株主総会で「取締役会に一任する」等とした場合は株主総会の日ではなく取締役会の日となります。また、具体的に決まっていない内定状態の金額を損金に算入することはできません。
②退職年金の損金算入時期
実際に支給した日の事業年度で、未払いの部分は損金に算入することはできません。
また、名目上退職金であっても、何年にも分けて支給する場合は退職年金とみなされ未払計上した分が税務調査等で否認されます。
※役員へ退職金を支給する場合は、金額は適正か、退職後は退職前の実権を持たないか等他にも注意する必要がありますのでご注意ください。
⑵従業員へ支給する場合の損金算入時期
従業員の場合は具体的に定められていないため、以下の3点を満たしているかで判定します。
・退職した日
・支給する日
・金額が確定した日
全て満たした事業年度の損金となります。
2.受給する側(個人)
受給する側は役員でも従業員でも同じです。
⑴退職一時金
他の所得とは分けて計算される退職所得となり、「退職所得の受給に関する申告書」を会社へ提出することによって、勤続年数に応じた大きな控除を受けられます。この申告書を提出しなければ控除を受けられず、受給する全額に20.42%の税率が掛けられます。
※控除額の計算については、ここでは省略させていただきます。
⑵死亡退職金
死亡後3年以内に支給が確定したものは相続税の対象になります。生前に退職し、退職金を受給する前に死亡した場合も同じです。
あまりにも多額な弔慰金も死亡退職金とみなされます。
こちらも控除があり、500万円×法定相続人の金額の控除を受けられます。
⑶退職年金
公的年金等に係る雑所得となり、控除を受けられますが、他の公的年金等と合計する必要があります。また、受給する金額や年数にもよりますが、控除額が退職一時金と比較して少なくなる場合が多くなるかと思います。
他にも社会保険に影響が出てきます。
今回ご紹介したものは、あくまでも支給する法人の損金算入時期と受給する個人の税務処理についてであり、それ以外にも多くのことを検討・確認する必要がありますのでご注意ください。