事業承継よもやま話 1.後継者を志す方への言葉情報一覧

  • ホーム >
  • コラム >
  • 事業承継よもやま話 1.後継者を志す方への言葉

事業承継よもやま話 1.後継者を志す方への言葉

 最近、お客様の所に伺った折、事業の承継や後継者について話題なることがしばしばあります。私が相談を受けるのは、現役の社長様であったり、幹部の方であったりしますが、その時は、私が後継者問題についていつも考えている以下のようなお話いたします。


後継者を志すあなたへの言葉

 赤字法人が8割を超え、また実体バランスで債務超過である中小企業が3割から5割はあるのではないか?といった状況の中で、後継者となって金融債務の連帯保証を引き受けるより、サラリーマンになった方がいい。といった状況が続いていましたが、最近はこれに就職難という新たな課題が問題となっています。

 私自身、毎晩顧問先と会食を続けたり、土日でも冠婚葬祭や付き合いなどでほとんど家にいない父をみて、自分や家族との時間を持てない税理士には決してならないぞ、と大学卒業まで思っていました。しかしちょうど第二次オイルショックで大学の同級生は就職がほとんどありません。法学部でありながら弁護士試験は大変難しく、入学したときはほぼ全員が弁護士を目指しながら、結局私の知る限り同級生では弁護士になった者はいませんでした。就職の為に留学をするといった現象が初めて話題になったときでもありましたので、簿記を勉強するなら仕送りを続けてくれるという父親の誘惑に乗って簿記の勉強をはじめたのが税理士となったきっかけでした。

 今年の高校生の就職率が3割程度、来年の大学生の内定率が半分程度、ついに世界1の輸出大国となった中国でも大卒の3割は仕事がない状態です。そういった時代背景のなかでは実家の仕事に入るのはとりあえず、最も手っ取り早い就職方法となっていく傾向は今後増加していくと思われます。


家業的企業

 あなたが社員数人といったいわば家業的な会社への就職であれば家族と仕事をする雰囲気でしょうから、取り立てて大きな問題発生はないと思います。家族でとことん話し合いながら、いろいろな問題解決がされていくことでしょう。むしろ問題は、減り続ける売上をいかに家族社員一緒になって確保するかということで、社長の息子、娘だからといった特権などなく、むしろ、家族だから社員以上にサービス残業などをやらされる便利な存在のはずです。こういった企業の後継者候補のあなたには、「とにかくがむしゃらに働けば道は開ける」としかいえませんが。若さを武器に頑張ってほしいものです。


中堅の中小企業

 問題なのは、社員がそれなりにいて、曲りなりにも組織的な事業活動をせざるを得ない規模の会社です。そういった企業のオーナーの実子で後継者を目指すあなたへは少し厳しい言葉を言わざるをえません。

 

 ①社長とあなたは他人です

 父親がいくらオーナーであっても,あなたは単に子供である。という関係があるだけです。実力、能力、行動力、経験、社員や得意先からの信頼などそのすべては父親のものであり、あなたに初めから備わっている経営能力などあるはずがありません。仕事を通してゼロから一つずつ獲得していくものです。「父と私の人格は違い、社長の子供だからといって一つも偉くはないのだ。むしろ色眼鏡で見られる分不利だ。」という自覚から始めないと大きく誤った方向へいきかねません。

 

 ②社員はえこひいきを見ている。

 中小企業にはほぼ、家族、親族の方も入っています。会社を大きくするために、大きく貢献している方だと思います。その方達をもし他の社員と実力以外のところで、えこひいきした場合、他の社員は当然やる気をなくすか、会社への帰属意識が後退するでしょう。

 あなたもそれと同じことで、実力で這い上がってこなければ、単に子供というだけで初めから役職についたり数階級特進したりすれば、他の社員は住む世界の違う人間としてしか接してこなくなるでしょう。本音も情報もはいってこなくなってしまい、形だけの仕事しかできなくなったり、失敗する前に注意してもらえなくなります。その前にきちんとした教育すらしていただけないかもしれません。

 

 ③仲間、上司、部下はもらうものではなく作るもの

 いくら社長があなたをえこひいきしなくても、社員は社長の子供として、一線を引いてきます。あなたから話しかけたり、相談しないかぎり向こうからは決して打ち解けては来ません。形は敬っていても仲間とはみませんので、通常の部下上司としての報告連絡相談程度はあっても叱ったり叱られたりの本音でのつきあいはできにくいものです。あなたから積極的に求めなければなりません。焼き鳥屋へでも誘って本音の付き合いをしてみてください。そのためには社長の子供ということは忘れなければなりません。また高い外車を入社して間もなくなのに乗り回すなどの特権的な取り扱いは極力自ら辞退すべきです。

 

 ④後継者と決まってはいない

 ある会社の再生の仕事をしているときに、数年前に会社に入った息子さんが日曜日に相談にきました。「わたしは、祖父、父から将来社長になるんだとしか教育されませんでした。今回の再生で父は経営責任を取って社長をやめますが、わたしは社長にはなれなくなるのですか?」との相談内容に一瞬絶句してしまいました。膨大な債務を支払えず銀行交渉、社員のリストラを始めとする血のにじむ生き残りの作業を会社全員で行っているときに、「今その相談をするときではないですね、あなたが本当に努力して経営陣の一員にまず加えていただくことができるか、またその後皆さんや銀行などがあなたしか社長にふさわしい人はいないと評価していただいたら、ということですね。」と答えたのですが、おとぎの国の王子様と勘違いしているのではと唖然としてしまいました。バブルのころには残念ながらJCの中にそういうメンバーがいたのは事実でしたが、努力も経験もせずに後継者になれる右肩上がりの甘い時代は終わったのではないしょうか。

 

 ⑤実力で下から這い上がれ

 もしあなたが後継者になりたいと志をたてるなら、他の社員の3倍努力が必要です。当然8時から5時で仕事は終わり、土日は休養というような甘い考えなら一般社員と同じですから社員のままですね。それを家族愛で無理に昇格させては会社経営に亀裂を生じます。

 まず通常の社員としての努力、これだけだって大変な努力が必要です

 次にできるだけ早く昇格するための、仕事のマニュアル化等。上司になったら今までしていた仕事を部下にやらせて管理し、評価しなければなりません。

3番目が将来専務、常務などになったとしたら会社全体の中でいま与えられている仕事をどう位置付け改善等していくか、いわば全体的な目で見ていく為の情報収集。この3つの目と3倍の努力で這い上がっていくべきでしょう、

 実力とは個人的能力ではないと思います。仕事仲間と忌憚ない意見を言えるように努力すること。取り巻きを作らないこと。得意先仕入先友人からたくさんの意見情報をいただくこと。これは誰でもそのような努力をすれば得られるものです。頑張って会社を継いでください。